ネコと紫の日記帳

ひたすら己の趣味の備忘録。読んで下さる方ありがとうございます。

舞台『嫌われ松子の一生』(録画視聴)

(原作未読・映画未見)

(特にネタバレ気にしてないのでご注意ください。あとたぶん読み辛い)

キャラメルボックスの岡田達也さんが客演されてたのは(御本人のブログで)存じてて気になっていたのですが東京だったので行けず、今回CS放送があったので、赤い熱情編と黒い孤独編の両方観てみました。

映画があったことは知っていましたが、私はダメージを受ける系の作品だなと何となく感じていたので触れず。達也さんが舞台に出演されたのもまだ最近のような気がしてたんですけど、もう2年半くらい前なんですね…時の流れが早い。

主演は乃木坂46桜井玲香さん(赤)と若月佑美さん(黒)で、それ以外の6名は全員男性。オレノグラフィティさんや、なだぎ武さんもいらっしゃる豪華なメンバー。他の方は初めて拝見したのですが皆さん素敵な役者さんばかりでした。その中では島津役の役者さんが一番好きですね。でもこれは、皆さん何役か演じられてるんですけど、島津以外も良い人役だったからかもしれない。

ただ何となく黒→赤の順で観たのですが、個人的には断然黒松子が好き。開始5分で鳥肌が立ってやばかった。観終わったらぐったりして疲れ過ぎてうたた寝しました。

一番最初はボロボロの姿なのでよくわからないんですけど(時系列が最初に松子の最期で、現在の時制で狂言回しが現れて、松子の過去を見ていく流れ)、過去になって綺麗な姿で現れた時に、中の人が昭和生まれなわけないのに完全に昭和の女性で(昭和が舞台)、共依存がやばすぎて、尽くし過ぎて男をダメにするという。創作では大好きだけど(それもものによるけど)、現実では絶対無理なやつです。現実では絶対無理なのに何で創作なら好きなのか自分でもわからない…。

ものすごく簡単に言うと、「男運のなさ過ぎる松子さんの数奇な人生」といった物語なのですが、でも全部が全部彼女が悪いわけではないと思うんだ…。いや明らかに悪かったね、という部分もあるけど。赤木さんに付いてけばよかったのに。それがベストエンディングだったと思うのに(物語が終わっちゃうけど)。何で怪しい方に付いていっちゃったのかなあ。そこだけは謎。

最初の八女川さんは…八女川さんが死んじゃったのは松子のせいなんだろうか。確かに共依存がやば過ぎると感じたし、この2人でいても幸せにならんだろうなとは思ったけど。けど、自殺以外の手がなかったのかな。そもそも、松子から逃げたかったんだろうか。それとも、書けない自分に絶望したんだろうか。書けない八女川さんを松子が認めてあげればよかったのかな。となると、やっぱり松子のせいになるのか…うーん。

岡野さん(達也さんの本役)は、岡野さんが悪いよ(苦笑)。家まで後をつけた松子も松子だけど、岡野さんが完全に弄んだんだもんな。でも松子の死後、小説にしようと思ったのは罪滅ぼしなのか何なのか。

赤木さん(なだぎさん)は超良い人なので、やはりここを選ぶべきでした。その後、本当に幸せになるかはわからないけど、他の4人(島津さんを除く)よりは絶対良かった。

小野寺は一番悪い人(笑)。悪いからこそ魅力的に見えちゃったのだろうか。赤木さんより小野寺を選んだところが一番理解できないところ。雄琴が知ってる場所なので(関西同士だし)、あの辺で暮らしてたのかなと思うとリアルでした。

島津さんも良い人だった。ここでもまだ幸せになるチャンスはあった。でも、出所の時にも言われてたけど「忘れて」って言われたら待たないでしょう…。「待ってて」って言うのかと思ってどきどきしてたのに。期待してたのに。そう言ってくれたら、島津さんなら待っててくれただろうし、そもそも早々に入籍して面会も来てくれたんじゃないだろうか。そういう未来しか想像してなかったので、「あー、わざわざ不幸を選ぶのか」とちょっとびっくりした。なのに出所の時に島津さんが来るんじゃないかって期待してるし。来ないよ! あなたがそう言ったんじゃん!

龍君は、言っちゃ悪いけど、これ龍君が松子の不幸の元凶ですよね…?(ばしっと言わないで変な対応しちゃった松子も松子だけど) 大人になっても、もう一度叩き落としてるしね。重すぎたのかな。龍君の覚悟が足りなかったのかな。「眩しすぎた」って言ってたけどあまり納得できなかった。最後、お骨になった松子と再会して泣いてる場面で「生きてる間に迎えに行ってあげればよかったのに」と冷めた目で見てしまった。

まあ、でも確かに松子さんの愛は重いです。重すぎです。だから、「愛が重い」って何だろう…。何で黒松子が好きって、私もすぐ重くなるからだよ! 本当に気を付けてるけど! だから…まあ、「重い」ってことは相手本位なのではなく、自分本位なんだろうなと思います。「あなたのためにやってるの」と言いながら自分のためにやってるやつね。

ただ、そんな松子さんが愛を学んでいった物語だと思うんですよ、これって。だから、龍君と大人になって再会して恋人同士になった時は、本当に彼のために愛を捧げていたと感じるのです。でも龍君は受け止めてくれなかった(受け止められなかった)。まだ器の大きさが足りなかったんですかね。

この舞台、舞台の形も面白過ぎて(興味深いという意味)、十字の短い花道みたいになってました。なので、お客さんは四方にいるのです。役者さんとの距離も近いし、お客さんの間を駆け抜けることもあるし。小道具は大体花道の脇に置いてあって、必要な時にそこからすっと取り出すスタイル。面白過ぎでした。すごい。

関東はいろんな舞台が観られていいなあ。乃木坂ファンのお客さんも、1人くらいここから舞台の面白さに目覚めてくれてたらいいな。最初の舞台として観るには刺激が強すぎた気もするけど。